311. 共振現象により発想を得た動揺装置

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仮想現実VRを利用した乗り物シミュレーターでは、6自由度のモーションベースを利用が必要になります。例えば航空機の挙動を再現する技能訓練フライトシミュレータ、自動車の縦横重力加速度を再現する技能訓練用ドライビングシミュレータが代表的な例です。6自由度(XY軸・縦横移動、Z軸・上下移動、XYZ軸・回転運動)の再現により、加速度の再現ができる点もモーションベースの利点です。ところがモーションベースは、サーボモータを利用した装置となり、メンテナンス性を含めた費用対効果がユーザに問われます。モーションベース採用による大きなコストは導入時の障害となります。

費用対効果が問われるモーションベースですが、アメリカで開催されたゲーム技術を披露するる展示会に参加し簡易的限定してモーションベースの機能を再現する事に気が付きます。私は音響技術の最新技術を紹介するブースを訪問しました。ブースでは立体音響を用いた潜水艇のシミュレータが提供されていました。操縦桿を操作し浮上と潜水をシミュレーションする事が出来ます。オペレータは座席を組み込んだ床ステージに座りモニターに再現された潜水艇の窓を眺めながら操縦します。潜水艇の操縦桿を奥に押し込むと潜水しながら海底に着底します。潜水艇が着底すると岩に衝突した状態が再現され、着底と同時に衝突の大音響が再現されます。貧弱な椅子の床は音で共振し床の振動が感じとれます。私はこの瞬間に浮遊感と衝撃は振動だけでも感じ取れる事を学びます。音の共振による振動は、アナログ的な上下動です。浮遊感は振動では再現されませんが、過去の経験により映像の動きに合わせ脳が浮遊感を作り出すのだと考えました。実際に衝撃は振動で伝わる事と、脳がイメージする感覚のトリガーを引いてしまえば、過去の経験に基づき人の脳は衝撃に至る現象をイメージすると仮定します。これにより、上下動の高速動作に限定したモーションベースの開発を決断しました。