今回は安心について考えます。安全は体を守る事、安心は精神をやすらかで安定した状態に保つ事で心を保つ事です。人は日々生活を様々な事を体感し経験として残します。ポジティブな事象と、ネガティブな事象を体感し様々な感情を生みながら体験として蓄積します。
人はネガティブな体験を通じてネガティブな感情が生まれます。ネガティブな感情は、悲しみ、怒り、恐怖、不安、後悔、不満、緊張、嫌悪、恥、軽蔑、嫉妬、劣等感、恨み、諦め、無気力、空虚、落胆、寂しい等の感情を示します。特に、恐怖、悲しみの二つは、生物の特性として備わる忘れる事により、精神の安定を保っているとも言えます。
「恐怖」は死をイメージする感情です、「不安」は、生理現象で避けられない状態です。「嫌な気持ち」は、人の生存にとって危険なものを避けるアラートです。従って「恐怖」、「不安」、「嫌」は、人にとって強いネガティブな感情を引き起こす生理反応です。
それでは忘れる特性に関して注目します。忘れる行為は学習する上では大きな課題の一つです。記憶には、感覚記憶と短期記憶、長期記憶が有ります。(記憶の仕組みについては、50話「災いを記憶する」で説明していますので参照ください。)人は学習により眼で読み取った内容を短期記憶として記憶します、その後脳で整理を行い必要な内容を長期記憶として保持されます。学習による記憶では、陳述記憶として大脳に記録されます。この陳述記憶ですがエビングハウスの忘却曲線で知られる様に、一定期間で記憶量は半減します。一方五感を通じて体感した経験は、非陳述記憶として偏桃体や小脳に記憶されます。我々がVRによる災害体感を通じて研究している、感受性反応はこちらの記憶になると思います。
何れにせよネガティブな感情を伴う記憶は、精神の安定を維持する為に忘れます。この忘れる特性は、人が生物として精神を安定した状態に保つ為必要です。従って、我々が取り組む安全教育においては、人の生物的な特性として学習したことを忘れるのが人間であると認識し、これらの人としての特性を考慮し教育カリキュラムを実行する必要が有ります。安心を維持するには人の特性を学び考慮し安全安心に取り組む必要が有ります。