126. 第1話.新しい製品のプロトタイピング・サイクル

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今回は20年の製品開発を通じて取り組んできた試作開発サイクル、新しく安全手法を生み出すサイクル、安全性を高め安全プロセスを維持するサイクルなど様々な発展手法に関して全8話で紹介したいと思います。

 顧客の要求に合わせカスタム製品を開発するケースでは、顧客のイメージと機能仕様を聞き出すヒアリング作業が重要になります。ソフトウエアの開発で最初に実施されるこの工程は、開発を進める上で最も重要な工程で仕様を策定し決定するプロセスです。特にソフトウエアの開発仕様は、自由な発想で定義する事ができます。イメージを膨らませればどんな仕様でも実現できそうに思います。ソフトウエアはアイディア勝負の半面、どの様な仕様にも対応でき実現できそうですが、技術的に実現できない項目も存在します。実現性を事前にシミュレーションしておかないと開発作業は困難な状態となり実現できなくなってしまいます。開発が終わり製品化されたソフトウエアの使用が続くと新たな要求が出る事が多いです。その要求に応える為に機能拡張の要求に応えられるよう設計時に考慮しておく必要が有ります。ソフトウエア開発は、将来の要求を予め予測し、機能の拡張性を考慮した上でプログラムの構造を取り決め設計する必要が有ります。VRの様に視覚イメージが伴う製品開発では、設計者と顧客のイメージ差が大きな課題となるケースが出てきます。このイメージは感性によりイメージが脳の中で生成されるためで有り、感性は人それぞれ微妙に異なります。

VRの様に感覚(視覚及び聴覚)が大きく感じ方を決定づけるソフトにおいては、イメージを文章で定義し、双方が理解し、合意を得る事は難しいです。多くのケースで設計者と顧客のイメージを一致させる事は困難で大きな課題の一つです。感覚が伴うイメージは、イメージ生成に大きく作用する要素として感性が深く関わります。この感性は各個人の経験、物事を体感した学んだ過程、知識を得て認知された条件等の条件も含み体験が異なっており、感性が一致する事は稀です。但し感性は平均分布すると考えられ、一般的なイメージの方向性はある程度一致すると考えられます。このような事情を考慮すると、VRソフトの要件定義は論理的な部分は文章で定義が行えますが、感性に関わるイメージについては文章で定義し難く、イメージを完全に一致させる方法は、イメージを提示しイメージで示すしか有りませんVRソフトウエアに開発では、開発が進行しイメージが生成される都度ソフトウエアを体感し確認する作業が重要になります。これらの確認作業は、要求する顧客との確認作業でも差異が発生します。イメージの提示で初めて仕様の確認を行う為、双方のイメージが一致しないケースが多くなり合意が得られず、何度もプログラムに修正を加えながらイメージを一致させる作業工程が増加します。この確認方法は開発効率が悪く、ソフトウエアの改変、場合によってはプログラム構造を修正する事になり大きな作業となり収益は下がります。我々は、設計が完了する前の早い段階、未完成の状態を用いて最終的な完成イメージを説明しながら、順次進める方向を修正しながら合意を得る方法により製品開発の効率を高めました。この手法により120社以上の試作開発を実行しており早い段階で合意形成が可能です。